1000回生まれ変わった魂もあれば、100回生まれ変わった魂もある。
好奇心を抑えきれず地獄のような体験を選択し続けた魂もあれば、源とワンネスだった自分を見失わない程度に、割に穏便な生を選び続けた魂もある。
つまり、魂はそれぞれトラウマの質も、量も、重さも全く違う。
何にワクワクするか、それぞれ個性があるように。
*
わたしはずっと「美しいことだけを語る人」が嫌いだった。
ある時、出会った歌手が「わたし、光の言葉ばかりを歌ってるんです」
と言うのを聞いて「あー、そうですか。あなたとは友達になれそうにありません」とこっそり思ったし。笑
「トラウマばかりではなかったはず。意識を変えて過去世の美しい体験や喜びにフォーカスしていきましょう」
と言われると
「ほお。湧いてくる痛みの感情は『意識次第』と言いたいのね。
穏便な転生を毎回選択されてきたんですねえ。
もしくは何万回と転生し、達観されてるんですね。(ケッ)」
と思ったりした。(性格わるw)
今でも、腹ん中はドロドロぐちゃぐちゃなのに、公の発信では美しいことばかり言ってる人はだいぶ苦手だけど。
おそらく、本音がそもそもずいぶんと美しい人、つまりトラウマの数や質が軽い人。
その人たちにも「交われない何か」を感じていたのだ。
もっと言うと、魂が持つトラウマの質や量の違いに着目しないで
「私達みたいに生きるといいよ。ほらキラキラしてるでしょ?」
みたいなボンボン育ちの魂(←失礼だがこれが本音)に心底うんざりしていたのだ。
ここまで読んだ人は察しがつくと思うけど、私は完全に地獄選択派だった。
(厳密には二つに一つじゃないけど)
自分が選んだにもかかわらず、長らく穏便選択派の魂たちに、気に食わないものを感じていた。
全然かわいいと思えなかったし、自分との違いをユニークとも感じなかった。
ヒーリングを重ねて、その感情もだいぶ薄らぎ、「まあ、(彼らに)小さな違和感はあるかな?でも別に嫌いじゃないよ?」くらいになっていたのに。
地球がアセンション中だからなのか、人間の魂は命ある限り成長を止めないプログラムだからなのか…。
ほんのわずかな違和感が、最近、どうにもしんどくなってきたのだ。
その根っこにあるトラウマ。
あまりに劇的で、今の私の根幹を作っている1つの生(せい)を先日、箱庭を使って癒した。
このプロセスを、記しておこうと思う。
*
その私は、巨大な岩を担いだまま、闇の中をもう何万年も立たされているようだった。
姿はまるで悪魔。
わたしが書いた物語『世界は愛と法則でできている』の言葉で言うなら名なき者。
英語ならエンティティ。
彼は怒り狂っていた。
人殺し、暴力、だまし合い、拷問、虐待、凌辱、差別、病、弱気者の存在の無視、
その残酷さに。
なかでも、神が沈黙し、その世界をただ見ていることに怒っていた。
(遠藤周作の『沈黙』を思い出すよね)
世界でのたうち回っている被害者の魂も、加害者の魂も。
生まれる前に聞かされた「二元の世界の新しい体験」にワクワクしながら降り立っただろうに。
これほどのむごさとは知る由もなかっただろう。
何が体験だ。
何が魂の成長だ。
じゃあお前が降りて体験してみろ。
誰一人、神に感謝などできないからやってみろ。
この二元の世界をあおる名なき者も許せないけど、もっと許せないのは神、あなただ。
沈黙し続けているお前こそ悪魔だ。
そんな風に叫んでいた。
つまり私は堕天使のようだった。姿はすっかりゆがんでいたけれど。
私は縦長の箱の中央に「堕天使の私」を置いて、その背中に大きな岩を背負わせた。
そしてなんとなく、「堕天使の私」と向き合うように、距離をとって「今世の私」を立たせた。
「堕天使の私」の暴言は止まることを知らず、多分、30分ぐらいはずっと神に毒付いていた。
(後から思うと、この時間がものすごく大切だった。もしいきどおりが止まらないなら、1回目のセッションは、毒づくだけで終えてしまってもいいくらいだと、後に感じた)
「堕天使の私」は、神も、世の中にはびこる名なき者も、その世界に翻弄されている人々も、あらゆるすべてを壊したいと思っていた。
そうして全てを終りにしたいと思っていた。
私は30分ほど彼の憤りを聞いて、「では、本当にこの世界を壊してみたらどうだろう」と提案した。
なんだかもう、そう提案するしかないくらい彼が絶望的だったから。
「堕天使の私」がうなずいたので、私は箱庭の中の彼の周りに、ぐちゃぐちゃに壊された人や物を配置し、
カオスになった世界を作った。
残虐なことをし続ける人々、そこに手を貸す悪魔、その周りで見守ってる天使。
あらゆるものが「壊されたもの」として、箱庭の中央辺りに配置された。
その中に、生まれた赤ちゃんを祝福し、涙を流して天に祈る母親の姿があった。
堕天使は思わず、その母親と赤ん坊をすくいあげた。
そして、花の美しさにときめいている少女や、畑をこして過ごした、今日と言う平凡を神に感謝する老人、つまり、「堕天使が善と感じる者たち」をすくいあげていった。
私は、「堕天使」が望んだように、カオスの中に在った悪魔や天使、残忍な人たちを箱庭の隅に追いやって、代わりに「堕天使が善と感じる者たち」を彼の前方へ置いた。
そうして、新しい世界ができた。
*
「今、どんな気分かな」
そう「堕天使」に尋ね、私自身が彼の体感を味わってみる。
わずかな満足感と穏やかさが生まれている。
彼の背中にあった大岩は消え、代わりにコールタールのような黒いシミとなって、まだ彼の背中に張り付いているようだった。
「そのシミから感じるものはある?」と私。
すると意外にも「堕天使の私」は「罪の意識」と返してきた。
「誰に対して?」と、尋ねると「神に対して」と言い、泣き出した。(この「泣きだした」と言うのは、「堕天使」に代わり、私自身が泣いている状態)
彼は言った。
こうして私が善なるものだけをすくい上げることこそ、分離の行為なのだ。
このように、善と悪を選り分けている限り、やがてこの美しいように見えた世界に、悪魔が忍び寄る。
本当に罪深いのは、世界を善と悪に選り分け続ける私なのかもしれない。
神が神であるのは、善なるものも悪なるものも、まったく平等に、その存在を許し続けるからなのかもしれない。
私はそのように在れないことに、神のように沈黙し、世界の全てを受け入れられないことに、罪の意識を感じてしまう…。
*
私は言葉もなく、慈しみの気持ちで、「堕天使の私」を抱きしめるように眺めた。
そして、「堕天使の私」が言う神とは、この箱庭の、どこに居るんだろう?と考えた。
「神」は「堕天使」の背後に、静かに広がっているようだった。私は、好奇心から、この「神」が、「堕天使の私」についてどう思っているのか、感じて見ることにした。
「神」は「堕天使の私」に、なにも感じていなかった。
「堕天使が善と感じる者たち」についても、良いとも悪いとも、美しいとも、醜いとも、なにも感じていなかった。
「堕天使の私」に、「こうしたらよいよ」みたいな、助言も導きすらも、そこにはなかった。
ただ、しいて言うならば、優しさがあった。
神は本当に「堕天使」の存在も、彼がより分けて作った新しい世界も、「いいよ」と言っていた。
「そこに居ていいよ」と。
しばしたって「堕天使の私」は、「この美しいように見えた新しい世界を、神に返上しようと思う。そうすることが、この世界にとって最善である気がしてならない」と言った。
私は彼の意向に従って、「堕天使」の前に置かれた母親や少女や老人を、箱庭後方の「神の場所」へ移動した。
そしてまた、「堕天使の私」の今の気分を味わった。
すると、罪の意識を表していた黒いシミは随分と薄らいでいた。
彼が一人で背負っていた世界を丸ごと神に返し、ずいぶん身が軽くなったようだった。
「堕天使の私」はようやく顔をあげ、前方に立つ「今世の私」の目を見返した。
「私は長い間、ずっと闇の中に立ち尽くしていた。私の一部であるあなたが転生し、その肉体や感情にも影響を及ぼしていたんだろう」
そう、申し訳なさそうに言った。
何故だか、私は「今世の私」だけでなく、他にもたくさん私の一部を成す存在たちがいるような気がして、「今世の私」の周りに、「複数の私」を配置した。
「複数の私」と「今世の私」は、恐る恐る「堕天使の私」ににじりより、「堕天使の私」も、同じく歩を進めた。そうして、私達は同じ場所で寄り添った。
「複数の私」は、「堕天使の私」が帰ってきたことを祝福し、その勇敢な姿に胸打たれて、全員で泣いた。
「堕天使の私」は驚いていた。
闇の中、何万年も、神とこの世界に毒づいていた自分。
その経験が、むしろ他の「私」にとっては、これ以上にないほど豊かな体験として、受け取られていることに仰天していた。
私も、同じく仰天していた。
私は、そこに集まった「私達」が、闇を味わい尽くした「私」も、光を味わい尽くした「私」も、自分の一部として美しく存在していることに、圧倒され、震えていた。
(厳密には、闇とか光とか、二つに分類されるようなイメージでは無かったが。分かりやすさを優先して)
ふと、「神」はどう感じているかに意識を向けると。
「神」はやっぱり、なにも感じていなかった。
ただ、「いいよ」と言っていた。
「そこに居ていいよ」と。
「今世の私」と「複数の私」と「堕天使の私」は一つになり。やがて、この箱庭を進めていた生身の私と統合された。
3時間ほどそのまま眠り、目覚めると、冒頭に記したような、いわゆる「穏便派の魂の人達」に対して、なんのわだかまりもなくなっていた。
*この箱庭療法は、私自身が夢分析の知識を元に、セルフで行ったものです。
しかしながら、事前に行ったフォレストとライラ・ミサによる共感ワークで、酷似したコンステレーションセッションが起き、それがこの箱庭療法の序盤となりました。
二人の協力が無ければ、この場所にたどり着くことは無かったように思います。
心から、二人に感謝を込めて。
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