【この世が2極化しないわけ】

「この世界は
2種類の人たちに分かれていくの?
比較と競争を土台に生きる
分離意識の人と。
魂の喜びから行動し
愛を分かち合って生きる人と」
 
坊やが言った。
 
「あぁ、
『この世は2極化する』って話だね。
あれは間違いだよ」
と、わたし。
 
「え!間違いなの?」
 
「まあ、少なくとも
わたし自身は『2極化する世界』を
選択していない」
 
「でも、たくさんの
スピリチュアルなリーダーが
こぞって2極化すると
言っているじゃないか。
どうしてそんなにたくさんの人が
間違えちゃったの?」
 
「ふむ。
『間違い』と言うのは
語弊があるかな。
彼らには『2極化する世界』が
必要で、
そいつを選択しただけさ。
ほら、言ったじゃないか。
ここは
『意図したことが現実化する世界』だって」
 
「あ!そうだった。
でも彼らがそう感じたのには
理由があるんでしょう?
 
比較競争の原理にのっかって
戦々恐々と生きる人と、
魂の喜びに生きる人。
 
分かれて行くように
見えるから、
そう言っているんでしょ?」
 
「たとえ見えていたとしても、
そう見たいから見てるだけさ」
わたしは坊やに向き直り
小さく咳払いをした。
 
「どうやら興味を持ったようだね。
それじゃあ今日は
『この世が2極化しないわけ』を
語るとしようじゃないか」
 
 
「この世は2極化しないわけ。
その理由はいくつかあるが…
 
一つは
『魂の成長段階を
2つに分けるなんてムリだから』さ。
 
みんなこぞって、
競争原理に生きる人と
愛に生きる人、
2つに分けたがるが…。
 
中にはさ。
魂の喜びに従って
充実して生きているのに
自分と誰かを始終比べて、
その感情にさいなまれている人も
いる。
 
一方で
好きでもない仕事をお金のために
こなし、職場で作り笑いを
しながらも
誰とも比べることなく
家族との暮らしに
満足して生きている人もいる。
 
君はこの2人の場合、どちらが
愛に生きる人と定義するんだい?」
 
「うーん…。
そう言われると、
2つにパッキリ分けてしまうこと
そのものが、乱暴な気もするね」
 
「こんなのは一例で、
人間はみんな凸凹なんだ。
仕事・ライフワーク・恋・結婚。
親との関係性・子との関係性
etc…。
 
ある一面では魂の喜びに
従っているけれど、
ある一面では
誰かとの比較に悩まされる。
 
いいかい?
 
ここにあるのはただ単に
『成長段階』だけなんだ。
 
魂の成長段階。
 
こいつは2つに分断できないし、
脈々と続いている
螺旋階段のようなもの。
 
それぞれみんな、
自分の得意なところから始めて
一歩一歩、成長していく。
 
ある人は、才能では
劣等感を感じない。
 
ある人は、
恋愛では誰とも比較せず
自分らしくあれる。
 
得意なところから
『自分らしく生きる』を選択し、
残った苦手分野は
少しずつ
人生を謳歌しながら、
分離から統合へと向かっていく。
 
このあたりの仕組みは、
1万年前も今も
なんら変わっちゃいない。
 
この世の単純な法則さ」
 
「だけど…。
多くのスピリチュアルリーダーたちは、
今の時代は特別だって言っている。
 
何万年も続いた、
比較競争をベースにした
『分離の時代』から、
愛をベースにした
『統合の時代』へ移るって。
 
だから今は特別なことが
起きていて、
ある人たちは
古い時代、『分離の世界』に残されて、
ある人たちは愛をベースにした『統合の世界』へと
移行できるって」
 
「確かにそう言っている人もいるがね。
 
けれど、考えてもごらん。
その発想こそが
『分離の意識』そのもの
じゃないか!」
 
「本当だ…」
坊やは目を見開き、
やがて神妙な顔つきになった。
 
「でも、だとしたら…。
モクちゃんが最初に言ったように、
『2極化していく世界』を
彼らが選択する必要性って
なんなのだろう…」
 
「それは人によって千差万別。
 
1つ言えることは、
彼らはまだ、分離体験で
やり残したことがあるのさ」
 
「やり残したこと?」
 
「ああ。
わたしは何も、
彼らを非難するつもりはないんだ。
正直に言えばね、ターナ。
 
君がわたしの中にやってくる前は
彼らに対し、
『これってミスリードになりやしないか』
って、怒ってた時もある。
 
影響力のあるリーダーたちに
わたしは少々
厳しいところがあるからね。
 
だが、その厳しさすらも、
わたしの中に残っている
『やり残した分離体験』の一つに
すぎない。
 
彼らに『厳しい』とは
とどのつまり
彼らを『ゆるせない』って
ことだからね。
 
この『ゆるせなさ』に気づいて
そこにひも付けされた痛みの体験に
気づいて、抱きしめてやる。
これが、かつてのわたしに必要な
とても大切な体験だった。
 
同じようにね。
 
2極化をうたう人たちは、
それぞれやり残した
分離体験を持っている。
 
ある人は、過去世のどこかで
多くの人たちを
助けられなかった痛み、
罪悪感をぬぐえないでいる。
 
だからこそ、
今度だけは救済したいと、
2極化と言うゲームを用意する。
手遅れになる人がいなければ、
救済はできないだろう?
 
ある人は、
『影響力のある者に
つき従ってしまう自分』
そんな自分を抱きしめて癒して、
己を信じる体験をしたい。
 
そのために、
2極化のトラップに
自らわざとはまりにいく。
 
まずは他者の決めた世界に
つき従って初めて、
『そこから脱する』と言う
体験ができるから。
 
そんなふうに、
彼らは自分たちが
体験したい世界を
自分たちの意思でもって
創造している。
 
ただそれだけなのさ」
 
坊やは納得したように首を縦に振った。
 
「単純に体験したいだけ、かあ。
この地球上では
『体験』は誰もに与えられた権利だものね。
天では思ったことが
すぐ叶ってしまうから、
この『体験』てやつが
てんでできないもの。
 
どんな『体験』も
自分たちで創造できる
この地球は
とんでもなく楽しい
遊び場なんだな。
 
僕はそうだな…。
やっぱりモクちゃんと同じで、
2極化しない世界を選びたい。
だってみんなで
一緒に幸せになりたいもの」
 
わたしは坊やのまぶしさに
目を細めた。
そうして、天に感謝した。
 
この純真無垢な坊やが、
わたしの内なる世界に
やってきてくれたことに。
 
 

 


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